のう天気男に、幸を。
友から、久しぶりにケータイに電話がかかってきた。
枯れ葉を踏むような声だった。
「どうしてん。心細い声やで。」
気軽に言ったら、
「いま、大学病院からなんだ。」と言って、
びっくりする返事が返ってきた。
先週から検査入院している。
最終的な診断は出ていないが、
たぶん、骨肉腫だ、と言う。
「日本一、のう天気な人間だと思ってきたけれど...。
ほんと、参ったよ。」と、しおれた声。
おっちゃんよりも、4歳ほど若い。
上京して、すぐ知り合い、
顔の広い奴だったから、いろいろなキャリアの人を紹介してもらった。
世話になった。
少しは、おっちゃんも返した。
見舞いは、大丈夫か、と尋ねて、
病院に行くわ、と言ったのが、先週の月曜日。
行けたのが、結局、土曜日になった。
病室のドアを開けると、
ベッドのそばに、しかめっ面して立っていた。
痛み止めを飲んでも、激痛が走る。
「ほら、見てよ。」と言って、パジャマの胸を開けた。
肋骨のあたりから、こんもりと盛り上がっている。
骨が溶けて、変形して突き出ているらしい。
典型的な骨肉腫だから、研修医に見せたい、と主治医が言って、
「昨日、若い医者が5人ほど来たよ。」
でも、触って激痛になったら、申し訳ない、と恐る恐る触るらしい。
「いいよ、いいよ、遠慮しなくっても、て言ってね」
「若い女学生もいたんじゃないか。」とまぜっかえすと、
「そりゃ、きまってるよ。」と、
しかめ面で、笑って見せた。
少し笑っても、咳き込んでも、激痛になるらしい。
おっちゃんも、30歳代で、椎間板の手術をした経験を話した。
「手術前の検査がまいったね、
部屋にお丸が置いてあった。」と言った途端、
笑いのツボを直撃しそうになったらしい。
「ちょっと、待った、待った。」と、
口元、目元は大笑いなのに、眉間に苦痛の深い縦皺ができた。
だめだ、笑いたいけれど、笑えない、と、
やっと、口に出した時、新しい見舞いの客が来た。
おっちゃんは、その人たちと入れ替わるように、お暇することにした。
「また、きてよ。土曜日じゃなく、
ウイークディでも、おまえなら、来れるだろ。」と言うから、
「ああ、今度、たっぷり、続きを話してやるよ。」
「頼むよ、辛いことは自分だけじゃないと思うと少しほっとする」のやり取りのあとに、
「じゃあ、少しは笑えるように、よくなっておけよ。」と言って、
ドアを閉めた。
やっぱり、歳の近い友の病は堪える。
どんな悩みのあるときでも、
寝るときは忘れて、眠りに付けたのに、
今頃、友は苦痛に寝返りもうてずにいるのか、と浮かんでくる。
せいいっぱい、笑わしてやってよ、神さん。




