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おっちゃんの「感想・鑑賞録」

2008年11月21日

「ヒッキー・カンクーントルネード」ハイバイ

筆者:いぬ2LDK(推定)のヒーロー

10年間、ひきこもりを続ける兄。
プロレスにだけは異様に詳しい。
母親と妹、三人暮らし。
この状況をどうにかしたいと願う母親。
兄を慕い、過剰にかばい「このままでいい」という妹。

ある日、母親がひきこもりのカウンセラー、
「出張お兄さん」を家に呼んできたことから騒動が巻き起こる...。

「ヒッキー・カンクーントルネード」は、
劇団ハイバイが4つの演目を、
オムニバス形式で演じる企画「オムニ出す」の演目の一つ。
劇団の旗揚げ作品の再演でもある。
作・演出の岩井秀人さんが、自身の体験をもとに作ったものだという。

印象的なシーンがある。
どうにかひきこもりをやめてもらいたいと、息子に詰め寄る母。
妹が兄をかばって言う。
「ひきこもりのどこがいけないの?お母さんだってひきこもりじゃん!」
スーパーのパート、気晴らしのボーリング場、そして家。
三角形を行ったりきたりするだけの毎日。
マンションの自室、居間、トイレを行ったりきたりするだけの息子と、
どこが違うのか。
世界を広げない。世界に閉じこもっている。
その意味では、二人は同じだ。

窓の外に、昼間の花火の音。
彼らの住む町に「みちのくプロレス」がやってくる。
「みちプロ」を観に、外に出ようか、
やめて、ひきこもりを続けようか。
迷いながら、とまどいながら、
玄関のドアノブに手をかけようとする兄の姿で、芝居は終わる。

僕にとってこの芝居は、
「ダメな男が社会復帰の第一歩を踏み出す」話ではない。
困難に立ち向かい、乗り越えるのがヒーローだとするなら、
この芝居は、2LDKの自宅マンションから、
どうにかして自分の世界を広げようとあがく「ヒーロー」の物語だ。

紹介演劇データ

  • タイトル:『ヒッキー・カンクーントルネード』
  • 作・演出:岩井秀人
  • 劇団:ハイバイ
  • 公演日:2008年11月
  • 劇場:リトルモア地下(原宿)