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おっちゃんの「感想・鑑賞録」

2009年6月19日

「リサイクルショップKOBITO」 ハイバイ

筆者:いぬわかったつもりにならない。わからないフリをしない。

動物園にようこそ。
「リサイクルショップKOBITO」は、おばちゃんたちの動物園。
いや、リサイクルショップなんですけどね、基本的には。

ここで働く、あるいはここにやってくるおばちゃんたちは、すごくフリーダム。
めいめい、勝手に好きなことをしている。
人の話を聞かない。誰も聞いてないのにどんどんしゃべる。大きな声で。
同時多発的にあちこちで起きる、独白や哄笑。
回収されることを目的としない言葉たちは、もはや言葉とは言えない。
ノイズを発するヘンな生き物。あるいは吠える動物。
見てる分には面白いけど、近づくのはちょっと怖い。基本的には気持ち悪い。

※あ、これはあくまで舞台の上の『おばちゃんたち』のことで、
 一般論ではありません、念のため。
 第一このおばちゃんたち、全員男が演じてるのだ。

「やっべー、なんかあいつらまとまりないし、理屈が通じないし、
接点ないし、一生わかりあえない気がするナー」
などと思っていてはいけない。
ためらうな、飛び込め!
そして彼女たちのざわめきの中から立ちあらわれてくるものに、
耳をすませるのだ!!

なーんて、演出家・品川幸子(登場人物です、念のため)に煽られた、
引きこもりの若い女。
「リサイクルショップKOBITO」に潜入、おばちゃんたちの観察を始める。
無数に吊るされた流行遅れの古着の陰から覗く女が見たものは、
おばちゃんたちの、過去。

九州から名古屋、名古屋から東京へと、
じわじわ進出してきた、あるおばちゃんの半生。
九州では親から逃げ、名古屋では伊勢湾台風に追われ、
銀座を目指した若い夢は、微妙に手前の小金井にたどり着き、
しかしそこでしっかりと根を下ろす。

あるいは、別のおばちゃんは、バブルの浮き沈みに翻弄されるうち、
いつしか夫と心が通じ合わなくなってしまった。
娘は大きな生活環境の変化についていけず、
心を病み、独り言をつぶやくようになってしまう。
(ちなみにこの娘が、リサイクルショップに潜入する引きこもりの女でもある)

ものすごーく端折ってしまえば、
「人に歴史あり」っていうことなのだと思うのですが、
同時にこの芝居は、他者理解のプロセスを描いたものでもある。

誰にでも「他者」っているでしょう?
それがおばちゃんかどうかはおいといて。
ていうか、自分以外はみんな他者か。まあいいや。
言葉が通じないのです、他者とは。だから理解しあえないのです。
だから、おばちゃんとの、つまり他者との「共通の言葉」を探す必要がある。
それはたいがい、見えないところに埋まっている。
たとえば、その人が過ごしてきた時間の中、とかに。
だから潜っていって、掘り出さなきゃいけない。そういうことです。

「あ、おばちゃんね」とわかったつもりになる。
あるいは「いや、おばちゃんだから」とわからないフリをする。
どっちもダメなんだけど、どっちかになっちゃってることって、多い。
ハイバイは、カラダを張って、「そこんところ」を伝えてくれる。

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東京公演は終了。
6月25日(木)から、大阪・精華小劇場で公演。
http://hi-bye.net/02kouen.html

 

紹介演劇データ

  • タイトル:「リサイクルショップKOBITO」
  • 劇団名:ハイバイ
  • 作・演出:岩井秀人
  • 公演日:2009年6月
  • 劇場:こまばアゴラ劇場(駒場東大前)