『経営論から見た日本のプロサッカー』 武藤 泰明
ゼルビアという「公益企業」
一橋大学イノベーション研究センター編
『一橋ビジネスレビュー』(季刊2009SPR)、
「ビジネスとしてのスポーツ特集」の中の原稿、
『経営論から見た日本のプロサッカー』
Jリーグ発足の時、
初代・川淵チェアマンは、親会社を回り、
「10億円を10年間、支援すること」を説得したという。
100億円も投資する大事業なのに、
ふつうの企業のように財務上の成果で評価されるわけではない。
Jリーグ創設の時、目的意識は、次の3点と言う。
①代表を強くすること
②各都道府県に少なくとも1つのJクラブがあること
③地域スポーツの発展に貢献すること
代表は、3度目のW杯出場を決めた。
課題は多く残るものの、成果を上げたといえる。
2番目の課題、47都道府県にJクラブをつくるためには、
クラブ数はJ1が18、J2は2009年シーズンから18になり、
もう少しJ2をふやすことが構想されているが、
J1とJ2合計のクラブ数は50にならないだろう。
ゼルビアも、この勢いに乗って、J2を目指しているのだが、
Jリーグ入会希望者は、40ほどあるという。
目標達成の目途は立ってきたということだ。
3つの地域スポーツへの貢献も、
著者は、「ある程度達成されてきた」と評価している。
では、残る課題は何か。
クラブ経営の健全化・安定化ではないか。
そのためには、フロント・スタッフ、
スポーツマネジメントのできる人材が重要だという。
Jリーグ発足当初と違い、
Jリーグで近年入会したクラブに多く見られるのは、
クラブの地元から出資を募り、地元あるいは域外の企業がスポンサーになるというもの。
すなわち、オーナーとスポンサーは分離されている。
オーナー&スポンサーの場合は、独立した経営志向が乏しいが、
フロント・スタッフも同時に供給される。
しかし、オーナーとスポンサー分離の場合、
すなわち、ゼルビアのようなケースは、
ピッチの戦いと同時に、
経営体制も「0」からのスタートになる。
Jへのハードルは、2倍以上だ。
また、Jクラブ経営の特質は、「クラブ経営情報の開示」にあると言う。
企業スポーツではできない。する意味もない。
Jクラブは、なぜ、開示するのか。
Jリーグは経営の透明性によって「仲間を増やそう」としているのだ・・・
Jリーグは、私企業であって、私企業ではない。
スタジアムの活用も、行政の支援を得なければならない。
行政は、市民の熱意に後押しされて動く。
Jクラブにとって、観客は仲間なのだ。
だから、ゼルビアは、「仲間+オーナー+スポンサー」で運営される企業と言える。
さらに、地方経済が沈滞する中、地域に活力を生む活動でもある。
もっと本質的なことは、
社会学者の言う、地方都市の「ファスト風土化」
すなわち、特徴のない街になっていく時、
Jクラブが、「街のアイデンティティ」になりえるのだ。
ゼルビアも経営基盤を整え、経営情報の透明性に努めると聞く。
サッカーの好きな人にも、できれば、嫌いな人にも、
「町田のアイデンティティ」として愛されるゼルビアになって欲しい。





