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おっちゃんの「感想・鑑賞録」

2009年6月17日

『ルポ雇用劣化不況』竹信 三恵子

筆者:おっちゃん未来を使い捨てる国。

苦い。
「貧困ジャーナリズム大賞09」受賞と言う。
読む前から、重い。
でも、知り合いの本だから、と意を決して読みだした。

著者、朝日新聞の編集委員・竹信三恵子さんは、
鋭く、丹念に、雇用の貧困に迫る。
   二〇〇二年以降、日本企業は人件費の削減を強め、
   その効果に支えられて、経済は「回復」を続けて来た。
だが、と、そのあとも鋭い。
   人は自分の得意なものでつまずく生き物である。
ホンマやね。しかも、自国の国民の人件費を惜しんで蓄えた金を、
リーマンショックでどこかへ垂れ流したんやないやろか。
   人件費削減は、企業生き残りのキーワードになった。
   九九年には、派遣労働の対象業務が原則自由化され、
   〇四年には製造業派遣も解禁され、
   低賃金で、解雇もしやすい非正社員を手軽に調達できる道が整えられていった。
そして、
   〇五年には、非正社員は三人に一人に迫り、
   十五~二十四歳の若者ではほぼ半数、働く女性では半分を超えた。
   九五年以降の十年で、非正社員は五百九十万人を増え、
   正社員は、四百四十六万人減った。

大手製造企業の工員も、、
バスの運転手も、
旅行の添乗員も、
介護福祉士も、
チェーン店の店長も、
小学校の先生も、
市役所の係員も、
あらゆる職種が、アルバイト・派遣・パート・契約社員の非正規社員になった。
お客との接点に立つ彼らは、正社員と同じような仕事をしながら
低賃金に据え置かれている。
彼を束ねるのは、「安い長時間労働の正社員」。
正社員は、お客の思いを非正社員を通して吸い上げることができず、
経営層まで届かない。
   低賃金の非正規の働き手の急増は消費の低迷を招き、
   不況からの本格的な脱出を妨げた。だが、それだけではなく、こうした働き方は、
   消費の活性化に必要な、すぐれた製品を作り出す現場も壊しているのではないか。
   私たちは、「不況を乗り切るための雇用劣化」から、
   「雇用劣化による不況」への道をたどりつつあるのではないか。
との結論にたどりつく。
いや、そんなことはないよ、と反論がしたい。
けれど...。

広告代理店のディレクターに渡されるラフスケッチそのままに
レイアウトする仕事を一〇年続け、
もう、私もディレクターの経験を積んだと面接に来た青年がいた。
四年もデザイナーとしてやっていながら、
名刺も一度も作ってもらってなかった女性もいた。
会社では、業界の真実を教えられず、育てようとされなかった。

その会社では育てる余裕がなかったのだろう。
育てる気持ちもなかったのかも知れない。
でも、でも、でも、と思う。
若い人も、ちょっと社会広く見ればわかるじゃないか。
自分で育ててもらう環境をつくったのか。
いままで消費者のように育てられ、「育てるのが、会社の仕事でしょ」と、
今もその気分でいたんじゃないか。

昔、「人を育てること」は、人を活用する企業の仕事だった。
いまは、「自己責任」になっている。
どちらも間違いだ。共同作業なのだ。
でないと、社会の最大の資産が枯渇する。
なのに、会社と正社員よりも、
正社員と非正社員との間に断裂が深まっている。
   工場の控え室には「協力工場の方はゴミをお持ち帰りください」と張り紙がしてあった。
   同じ工場で働いているのに、「よその社員」だからとゴミ箱も使えない・・・
お金の貧しさだけではない。
まず、「胸の痛み」を取り戻さなくては。

竹信さんに、
零細企業を営むつらさを訴える手紙を書こうかな。