「Cargo Tokyo-Yokohama」 リミニ ・ プロトコル
荷台から見える風景
「それではみなさんが、横浜まで無事に運ばれることをお祈りしています」。
トラックの荷台に乗った観客は、そんな言葉で送り出される。
ドイツの演劇集団リミニ・プロトコルによる「Cargo Tokyo-Yokohama」。
演劇と言っていいのか、イベントと言うべきなのか、よく分からない。
が、とにかく観客は、巨大な特注のトラックの荷台に設置された
特製の観客席に座り、天王洲から横浜まで「運搬」される。
荷台の片方はマジックミラーになっていて、中から外の様子を眺めながら、
荷物の目線で、東京-横浜の短い旅を楽しむ、という趣向だ。
案内役は、二人の、本物のトラックの運転手。
一人はブラジルから来た日系人。20年間日本で暮らしているそうだが、
イントネーションは少しぎこちない。
もう一人は日本人。山と温泉巡りが趣味という。
荷台から見る湾岸の風景は、とても美しい。
午後から夕方にかけ、日が暮れていく様子をじっくりと味わいながら、
「京浜トラックターミナル」、「横浜港流通センター」など、
普段は行けないような場所に連れていかれ
流通の仕組み、現場に触れる。
また途中、「デコトラ」との抜きつ抜かれつの
カーチェイス(法定速度内)があったり、
突然道端に登場し、美声を披露するブラジルの女性歌手がいたりと、
楽しめる要素も沢山ある。
二人の運転手による、実体験を交えたトークを聞きながら、
次に何が起こるか分からないドキドキに身を任せながら、
僕が感じていたのは「自由」ということだった。
トラックの運ちゃんは、自由だった。
僕らの知っている東京・横浜とは異なる風景を見せる「ウラの東京・横浜」を、
自分の腕一本で、自分の裁量で走り回り、金を稼ぐ。
トラックを飾り立てる「デコトラ」も、
運転席の後ろに仮眠室を作り、泊まりながら移動するスタイルも、
運転手が自由人であることの証明だった。
だが、その自由はどんどん狭められている。
走行距離はレコーダーで管理され、
「デコトラ」はいろんな企業で出入り禁止になった。
運送会社は運転手を管理する。
だがその運送会社は、クライアント企業から厳しく管理される。
その背後に見えるのは「グローバル社会」がもたらした激しい競争だ。
日もとっぷりと暮れる頃、横浜に着いた。
観覧車のネオンを見ながら感じていたのは、
異世界をのぞいたワクワクと、
その異世界が「こちら側」に取り込まれてしまうことへの寂しさだ。

紹介演劇データ
- タイトル:「Cargo Tokyo-Yokohama」
- 団体:リミニ・プロトコル
- 公演日:2009年11月
- 劇場:都内(天王洲-横浜)





