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おっちゃんの「感想・鑑賞録」

2010年3月03日

『春の数えかた』 日高 敏隆

筆者:おっちゃん不景気を嘆く前に、アリを見ろ!

寒の戻りが怖いけれど、気持ちよくコートを脱いで、
4日ほど前から、「もうすぐ、春ですね」気分になってみた。
ついでに、陽気に誘われて、『春のかぞえかた』を読みなおす。
昔のことを忘れ、意外なところで感心したりする。

花に、なぜ、性があるのか、と著者に問いかけられる。
著者は、「花の女王」仮説を唱える。
     ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』で赤の女王がアリスにいう
     -「ここでは、同じ場所にいるためには、力の限り走らねばならぬのじゃ。
     どこかほかの所に行きたければ、少なくとも
     その二倍の早さで走らなければならぬのじゃぞ!」(岡田忠軒訳)
これではわからん。著者は、解説を進める。

動物や植物たちは、病原体の脅威にさらされている。
しかも、病原体は、ドンドン変異していく。
     変異した病原体に対抗するには、また新しい突然変異が必要だ。
     突然変異した遺伝子を早く広めるのは、オスとメス、つまり性をつくって、
     繁殖の際に遺伝子を混ぜ合わせるほかはない。
「偶然の悪戯」を期待して、花は性に勤しむのか。
思い通りにいかないから、人生はすばらしいのか、とひとり納得する。

ゴビ砂漠では、60度はあるだろう熱砂の上を走り回るアリに出会う。
     小さなアリがものすごい速さで走りまわっている。
     熱さにやられた虫を探しているのだ。
     虫が死ぬか、自分が死ぬか、ギリギリの限界で生きているアリたちには
     ボクは心打たれた。
しかも、そのアリたちは、
     日がかげるとアリたちは姿を消す。涼しい時はだれも死なないからだ。
食うために、いのちをかけているアリ。
不景気や言うても、いのちまではかけてまへんで、と自分を慰める。

「秋、カマキリが高い所に卵を産むと、その冬は雪が深い」と
雪国では、あちこちで言い伝えがあるらしい。
カマキリは9月の末から十月ごろ、
木や灌木の細い枝や、丈の高い草に、卵を産む。
卵は、水を通さない卵嚢(らんのう)に包まれているから、
雨にも雪にも湿ったり、濡れたりせず、冬を越すことができる。
ただし、ひと冬、雪に埋もれていたら、その効力はなくなる。
だから、雪に埋もれない高さのところに産みつけなければならない。
カマキリは、ちゃんと、来る冬の雪の深さを見越して、そうしているという。

新潟県・長岡に住む市井の学者が、実験で実証した。
しかし、卵を産むのは、十月、
雪が降りだすのは、十一月末、根雪になるのは、十二月になる。
卵を産んだカマキリは、
     死んでから二カ月先のことを、いったいどうやって予知するのだろう。
ほんま、不思議やなあ。

慰め、癒され、励まされ、びっくりさせられ、
そんな話がたっぷり三六話も詰まって、400円。
しかも、歳のせいで忘れやすいから、何度読んでも新鮮です。
安すぎまっせ!